光と記憶を紡ぐ家

たちばな台の家

母親との同居を前にした4人家族のための改修計画。
改修は、年月を経てそぐわなくなってしまったり、そもそもの使用目的の変更を求められた際に行われるものですが、既存の特性を見極め、ときには『あばた』的な部分も『えくぼ』的個性として活かすことで魅力を増幅させ、建物の価値を高めることだと考えています。今回、マイナス要素として捉えていた敷地の特性からこの建物の個性を引き出すことを試みました。

ひな壇形状の敷地ゆえに、1階からも空が広く感じられるほど視界が開け、更に大きく張り出したテラスによって前面道路からの視線がさえぎられることが把握できたため、1階の和室とダイニングとを配置転換しテラスに向かって日常生活空間をテラス側へ開放することを考えました。多くの光を得られる開口部にはフラットとウェーブのカーテンを備え、それらの組み合わせで光の表情を楽しめる空間を創造しました。インテリアマテリアルは、家族自らがメンテナンスを繰り返し行い修繕を施せることを主眼において選定、既存建物を見たときの印象にあった週末住宅の面持ちで、時を経ても豊かさを抱ける「手ざわり」感を最も重視しています。
改修に際して、耐震補強を施してあります。べた基礎が良好な状態であったため、建物内部からの補強方法を採用。内装の大半を撤去できた1階はもとより2階個室等の収納部を撤去・補強し改善を図っています。今回、外観には手を加えることはありませんでしたが、建物耐力が改善され、インテリアは時を経てなおそれを味わえるものへと更新されたため、これから幾度も繰り返される光の情景とともに家族の記憶を紡いでいくことでしょう。

 所在地:神奈川県横浜市青葉区
 構造:木造在来
 規模:地上2階 
 延べ床面積:130.01㎡(1階 73.70㎡/2階 56.31㎡)
 工事種別:改修
 完成年月:2009年11月
 用途:住宅